癒しのコツ~茶と骨~
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その四十一、静岡お茶屋紀行~豊好園~

グリーンエイトで特にオススメされたのが豊好園。さっそく行ってみたいのですが、豊好園にお茶を買いに行く場合はどうすればいいんだろう?とりあえずホームページを見てみると営業時間とかも書いていない。通販のみなのだろうか、とりあえず電話してみるかな。

豊好園に電話をかけるボク。

もしもし、茶を購入しに行きたいんですけれど、どうすればよいのでしょうか?

私がいる時間であれば何時でも購入できますが。留守ですと、申し訳ありませんが出来かねます。いついらっしゃいますか?

では明後日の午後に伺います

わかりました。お待ちしております。

当日の午後一時半。到着。
静岡県 静岡市清水区布沢270
豊好園。

何処を見渡しても店が無い。ナビでもグーグルマップでもこの場所なんだけれど。電話してみるかな。

もしもし、今住所の場所に居るんですが。

じゃあ今そこに向かいますね。。

店員の方の案内で到着。

豊好園って茶農家!?ボクは製茶会社も通り越して、一人で茶農家に直接茶葉を買い付けに来たということ!?いつの間にか業者みいたいなことしてる!

どのようなお茶をご希望ですか?

グリーンエイトの方にオススメされてきたんですが、どんなのがありますかね?

ウチは品種が多いんですよ。全国でもこれほど沢山の品種を出しているところはないと思います。とりあえずお茶をお出ししますね。

美味い♪

コレ、ネットで見た一本5000円する高級ボトルのお茶。コレください!!あとはコレとコレ。
(片っ端から買いまくるボク)

無事購入できた。とりあえず一段落。お茶を頂きながらいろいろ話をしてもらいました。

最近の日本のお茶業界ってどうなんですか?

とても厳しいです。特に福島原発の風評被害で一時期は一気に落ち込みました。今はもう戻りましたけれど。

原発って福島ですよね。静岡でまで風評被害?そうだったんですか。でも輸出はどうですか、今日本茶は輸出が好調だそうですが。

一部の方だけですよ。全ての方が輸出できるわけではないですから。昔は贈答品としてまとめて買われる方も沢山いらっしゃったんですが、今や急須自体を持っていない方も多くなってきて、飲まれなくなっているから値段も下がってしまうんです。今の若い方たちは「お茶を出してほしい」といったらペットボトルのお茶を持ってきますからね。

ここで社長も来てくれて話に加わって頂きました。

このままだと茶農家はどんどん減っていきます。今は岡部の方で玉露をやっているようですが、昔は20ヘクタールあったのが、いまや8ヘクタールまで農地が減少しました。静岡の本山茶もどのくらい残るかわかりません。急傾斜の茶畑は効率が悪いんです。牧之原の茶畑のように平らな台地で栽培する茶畑であれば、栽培もしやすいのですが、傾斜の茶畑は効率化に向いていないので。

「平らな台地の牧之原の茶」と「急傾斜の地の本山茶」とどう違うんですか?

牧之原のような平地であれば朝から夕方まで日があたり、葉肉が厚くなります。コクと旨みはあるものの若干渋みも強いです。また平地の茶畑であれば、立地的にも機械化しやすいんです。

本山茶というのは山の傾斜の上に成り立つ茶畑なので日の当たる時間が短いく葉肉が薄いんです。当然味の違いも出ます。色も薄く、柔らかい味で爽やかな香りが特徴です。しかし傾斜の茶畑だと機械化も難しいのです。

効率化に向かないこういった茶畑の農家はあと5年くらいでほとんど消えてしまうでしょう。とにかく今は急須の茶が飲まれないので、茶の値段自体がどんどん下がっていますし。このままだと近いうちに静岡茶は鹿児島茶に抜かれてしまうでしょう。

まずいじゃないですか!静岡茶の日本一の地位が抜かれてしまう!

はい、特に問題なのが後継ぎ問題です。とても厳しい仕事なので、儲からないから自分の子供に継がせられないと廃業してしまう方がほとんどなのです。本当に厳しいです。好きでないとやってられないですよ。とにかく農家の高齢化が凄いです。若い農家がほとんどいない。50代以上がほとんどです。農家が減れば農道も荒れます。

農道?

畑への道が使われなくなり誰も通らなくなると、道が荒れるんです。そうなるとその整備も大変です、お金もかかりますし。

あ~なるほど。

でも僕は正直お金ってあまり使わないですね。とにかく仕事が好きです。仕事さえあればいいかな。

それは幸せなことですよね。ボクは毎日身も心もすり減るようにして稼いでいますから。何の為に生きているのか分からなくなる時があります。でもそれを言うと、周りは皆こう言います「みんなそうだから」って。

あはは(笑)

でもボクは諦めたくない。なんとかイキイキと生きたい。だから日々悶々ともがいています。仕事が好きというのは本当に素敵なことだと思います。

でも茶農家って冬は収入ないんですよ。

そうなんですか?

そう、ほとんどは繁盛記456月のみの収入だけ。それ以降は在庫の茶葉が少し売れるくらいです。かといって冬は冬でやらなきゃいけない事があるしね。直接稼ぎに結びつかないだけで、収穫期に向けてのいろんな準備をしなきゃいけない。だから好きでなければ絶対に出来ない。僕はこの仕事は本当に好きだからやれてるんだと思う。

厳しい世界ですね。

うん、とにかく茶業界全体が厳しい。だから問屋なんかも大変だと思うよ。茶農家がどんどん減って仕入れ先が無くなっていくから問屋が扱う商品自体が無くなってしまうんだ。問屋もこのままじゃあマズイということで喫茶店を始めたりしてる所もあるんだと思う。

問屋って商社みたいなものですよね。主にどんな役割をするんですか?

茶葉を我々農家から仕入れてから火入れして水分飛ばして形を整えたり、合組したりして売るんだ。特に火入れに関してのこの技術は強い。我々にはなかなか真似できない。

合組ってブレンドですよね。

ブレンドっていうと悪いイメージをもたれがちですけれど、お茶というのはブレンドしてより美味しくなるんですよ。これは間違いないです。

そうなんですか!?ブレンドっていうと確かにあまりよいイメージはないです。お茶はブレンドがありきのモノなんですね。

そうブレンドありき。もちろん小売店で買うのも良いよ。生産者に直接買い付けに行った方が安くてよいものが手に入ることも全然ある。ただ、店によってはクセもありがちだから、もしコンスタントに美味しいモノを手に入れたければ問屋で買った方が間違いないと思う。

今は静岡にも沢山の茶店が出来てますよね。ボクがいろんな茶店を見てきて特に気になったのは、サングラムと佐藤園ですかね。特に佐藤園の2階は衝撃でした。

どんななの?

こんな感じです。
(佐藤園の2階の写真をスマホで見せるボク)

面白い(笑)、サングラムには今度ウチも参加するよ。

そうなんですか!

そうシングルオリジンが今重要視されていてね。作り手の顔まで見えるような届形で参加することになった。佐藤園もあそこは問屋じゃあないんだよ、自社で栽培から喫茶店まで一貫している。だから佐藤園は強いと思うよ。 通販にも力入れてるし凄いと思う。ただ、このままだと静岡茶を作る農家そのものがどんどん減っていくから売ることが出来るだけの量が確保することができなくなってしまうんだよ。そのあたりが気がかりだね。

ヤバイじゃないですか。

ヤバイよ、ホントにヤバイ。あと5年10年先にはどうなってしまうか。間違いなく静岡の茶農家は激減してしまうだろうね。鹿児島に抜かれるのも時間の問題だよ。品評会で優勝するような茶を出すような茶農家もどんどん消えていくでしょう。あれはコストもかかります。品評会のお茶摘みの人の日当送迎だけでもかなりかかるし。

それは大変ですね。

ちなみに品評会というのは満点が200点満点。そこから減点方式で審査されるんです。ウチは一位になったこともあります。

一位ですか凄い!

品評会は金がかかるイベントではあるけれど、ちゃんと審査してくれるから嬉しいんだよ。ただ傾向と対策を練る必要はあるかもだけどね。

傾向と対策?

こういった茶を出せば入賞しやすい。ってやつ。そこに焦点をあてて仕上げた茶を出すんだ。日本茶AWARDっていうのもある。主に日本茶インストラクーの方々が独自の基準を持って良いお茶を審査するらしい。

本屋大賞みたいなものですね。芥川賞と直木賞とは別に消費者が主体になった賞を作ったと。あと静岡には沢山の日本茶カフェがありますけれど、豊好園さんが考える、静岡で良いお茶が飲める場所となると、どこですかね。

茶空間はもう行った?ここなら間違いないね。

骨雄は茶空間の情報を手に入れた。

茶空間ですね?行きます、ありがとうございます。しかしいろいろお話を聞いていると、これからの日本茶業界ってますます厳しくなりそうですね。ペットボトルのお茶ばかりでなく、急須で淹れるお茶を広めていかないと本当にまずい事になりそうですね。

ペットボトルのお茶も決して悪く言ってはいけないと思う。ペットボトルのお茶メーカーが茶葉を大量に買い取ってくれるというおかげ茶業界が救われているという面もあるんだから。自分としてはペットボトルのお茶が急須でお茶を飲む入口になってくれたらいいな、と思っている。深蒸し茶を入口に、浅蒸し茶、そして玉露、最後に煎茶の底なしへ・・・

煎茶の底なし!?

煎茶は底なしよ。ホントに深い。こういうところに茶葉を買い付けにホントにお茶が好きな奴が来る。ここにある高級茶とかお茶好きがバンバン買っていくから。茶葉が売れない?どこが?って感じるくらい買っていくよ。

では農家の方が自分達でも茶を売っていくこともあるわけですね。

確かに自分達で小売をすることで生き残ってきたという面もある。ただ小売に集中し過ぎると栽培がおろそかになりかねない。そこはバランスが本当に難しい。

じゃあ消費者がこの豊好園まで買いに来ればいい。というのが理想的なんですね。

ウチは店にするつもりはないんだ。

でも正直いうと、豊好園の茶をどうやって買えばいいのか分からないですよ。ホームページ見たけれど営業時間も載ってなかったし。だから電話して聞いて今日来たんです。

そういう人多いんだよ。でもそれでいいの。ウチは卸でやっていこうと思っている。商売っ気ないかもしれないけれど出来る限り生産に集中したい。茶葉は嗜好品というより、芸術だと思っているから。そもそもウチに直接来るなんてのは相当なマニアクラスだよ(笑)

ボクはいつの間にかマニアクラスにまでなってしまったわけですか。

沢山の茶屋を巡るのであれば、そこで働いている人達をよく観察してみるといいよ。お茶はその人を表すだなんてよくいったもので、確かにいろんな面でお茶とそこで働いている人は繋がっているのが見えると思う。

なんと6時間近くも話し込んで気付けば辺りは真っ暗に更けていました。正直、ここでは書けないような内容のエグイ話が多かった。お茶業界もいろいろあるようです。

気がつけば問屋も製茶会社もすっ飛ばして、直接茶農家に茶葉を買い付けにいくマニアクラスにまで上り詰めた骨雄。静岡茶の危機を目の当たりにしながらも癒しを巡る旅は続いていく。

窓の風景その43