癒しのコツ~茶と骨~
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その四十三、静岡お茶屋紀行~松島園~

静岡県静岡市葵区若松町81-2
松島園

豊好園の社長次郎さんから「ここは良いよ」と紹介していただいたのが川根茶の松島園。ここが松島園か、どうやって入ったらいいんだろう。

松島園に電話してみる。

はい松島園です。

もしもし、茶葉を購入したいのですが、直接農園に出向いて購入する事って出来るのですか?

はい、もちろんできますよ。

今、店の前にいると思うんですが、何処に入ったら良いのかわからないんですけれど。

すぐ迎えに行きますね。

案内してもらい無事到着。

凄い表彰の数々だ。新聞にも載ってる。

始めまして豊好園さんにお勧めしてもらいここに来ました。

ようこそ。結構直接来られる方が居るんですよ。昨日も遠方からわざわざいらっしゃったお客様がいました。あなたは業者ですか。

いえ違います。
(とうとう業者ですか、といわれるようになったか。まあ茶農家に直接茶葉を買いに来るのは業者くらいのものだし無理もない)

もうこの時期はほとんどお茶が売り切れてしまって、あまり良いお茶は残っていないと思うんですよ。安い値段のお茶であれば、少しは残っていると思いますが。

ここで主人の川崎さんが帰ってきた。

こんにちは、ようこそいらっしゃいました。お茶をどうぞ。

有難うございます。おお、一杯目の茶はやはり旨味が違いますね。

二煎めもどうぞ。

おお!このお茶は二煎目でも旨味が凄い!

そう、通常であれば一煎目であの旨味は終わるものだけれど、ウチは二煎目でもこの味が出る。だから煎茶の店から重宝がられるんだ。二煎目でもこの味が出る茶はなかなかないから、もっとお茶を置いて欲しいと言われるんだ。ウチの良いお茶なんかはすぐに売り切れてしまうんだよ。

2煎目でこの味が出るお茶は確かに凄いと思います。

せっかくいらっしゃったわけですし、変わったお茶を飲んでみますか。コレをどうぞ。

これは確か一本二万くらいする、超高級茶ではないですか、いいんですか!?

どうぞ。

おお!凄い!!これはまるでお酒ともカクテルとも言えない。純粋で爽やかな旨味だ! (感動するボク)

いろいろ話をさせていただきました。

お茶の定義というものが無いんです。ペットボトルのお茶は清涼飲料水。ペットボトルのお茶も良いとは思うが、あれをお茶と定義するというのは違うと思う。お茶はそもそも高級な嗜好品なんだ。あんなに安価で買えるものではない。

確かに。ペットボトルのお茶はビタミンも入っていますものね。

あれが入ってないと変色してしまうからね。そして抹茶の定義もない。酷い所になると茶葉を砕いて粉末状にしたものを抹茶と呼ぶようなところもある。お茶はお茶としてしっかり定義付けをして行かなければならないと思う。

お茶とは何かをしっかり決めるべきなんですね。

そう思う。「ご馳走」という言葉がある。私はお茶も嗜好品だしご馳走だと思っている。 ただ「ご馳走」というのは「客の為に、方々を亭主が走り回って用意する」というのが言葉の成り立ち だったと思うんだ。だから出前をとったりペットボトルのお茶をだしたりというのは馳走ではないと思っている。

なるほど。

テレビを見てれば分かると思うけれど中国では議員の会議では蓋付きのお茶が出る。でも日本の議員の議会ではペットボトルのお茶が出る。本当にあれで良いのだろうか。

確かに、ペットボトルのお茶が出ているのがテレビで見れますね。

国の農水政策では農家は規模拡大でコストを削減し、効率を上げることで農家の収入も増えると見込んだんでしょう。しかしお茶は規模拡大でやると絶対に質が下がるんです。ペットボトルのお茶とかであれば良いかもしれませんが、リーフで大型化は駄目です。絶対質が下がる。美味しいお茶は規模を小さくしないと駄目なんです。

米や麦、とうもろこしは大型化でもよいと思います。しかしリーフの茶葉で規模拡大は無理なんです。仮に大型化を断行してコストが下がって利益が上がるとします。しかし結局は値段競争になるでしょう。農家の利益は出ないと思う。

なるほど。

それに茶農家にとっての良いお茶と製茶会社の良いお茶というのも違う。製茶会社にとって良いお茶というのは儲かるお茶なんだ。お茶というのはブレンドによって味を高めるが、ただ量を増すだけの儲ける事を目的としたブレンドもある。お茶の味を高めるブレンドなら良いが、儲ける為のブレンドでは駄目なんだ。

金儲けに走る問屋もいるでしょうね。

仮に大型化で勝負したとしても、今や鹿児島では24時間稼働する茶栽培がある。鹿児島はお茶の新興地だから、皆がまとまって盛り立てている。このままだと静岡のお茶は終わる。

24時間稼働なんですか!?

そう、昔はお茶の市場というと全国に静岡一つしかなかったんだ。でも鹿児島や通信販売が出来てから一気に衰退してしまった。急傾斜の山間で出来る静岡の茶葉は確かに効率が悪いかもしれないが、かといってどこでも栽培できるような茶葉では鹿児島に負けます。私は山のお茶で質を高めて高級品としてやっていくのが良いと思っています。しかしこのままでは手摘みのお茶も減っていき、品評会に出すようなお茶屋もなくなっていくだろう。

急傾斜の地形で栽培する茶は確かに効率化や機械化には向いていないそうですね。

機械化が無理というわけではないと思う。キーエンスに手摘みのロボットを作ってくれって言ったんだけれどね、二億くらい予算がかかるらしい。国は六千万までならの補助金を出すらしい。とてもじゃないがお金がかかり過ぎて作れないと断念したようだ。

2億!

今や茶の単価は下がり続け茶農家はどんどん減っている。儲けが出ないからと続けたくても続けられないというのが現状なんだ。

ボクは静岡のお茶は美味しいと思います。モノは間違いなく良いんです。ただその本当の味を知る人があまりにも少ないんです。問題はPRの方法だと思います。

うん、でも今や急須を見たことのある人すら減っているんだ。時々お茶を広める活動をしに小学校に普及活動をしにいくこともあるんだけど、東京の学校で聴いてみたら急須を見たことのある子供は全体の二割くらいしかいなかった。

二割!?

恒常的なPRが必要なのだと思う。ウチは前にアド街ック天国という番組に出た事がある。確かに番組の反響は凄かったけれど、長くは続かなかった。

今はSNSの影響はテレビよりも大きいところもあるらしいです。問題はお茶をどう広めていくかなのだと思います。日本酒も同じような所があると思います。美味しい純米酒も大量生産は出来ません。しかし本物を好む消費者の草の根活動で今本物の純米酒は復興しつつあります。ボクは日本茶もそれが出来るのではないかと思うんです。

静岡のお茶も、ひとくくりではなく産地ごとに味や風味が違うということに着目してほしい。お茶インストラクターもソムリエのようにシングルオリジンで産地によるお茶の違いを比べるような取り組みもしていくべきだと思う。

なるほど。あと最後に教えていただきたいんですが、松島園さんが思う美味しいお茶を飲める所って言うと何処があるでしょう。

本当に美味しいお茶は産地で景色と空気と農家の話を聞きながら飲むのが一番贅沢なんだ。

分かる気がします。ボクも東京の寿司屋で御飯を食べた事があるんですけれど、静岡の漁港の定食屋の方がずっと美味しいように感じました。

あはは、なるほどそんなものかもしれないね。つちや農園、と相籐農園。ここに行ってみると良いよ。

骨雄は静岡茶業界の「つちや農園」「相籐農園」の情報を手に入れた!

ありがとうございます。行ってみます。それとお茶の広め方ですが、ボクは「癒し」がテーマになるのではないかと思うんです。

そう、お茶は癒しの効果がある。それを科学的に実証してもらうように言ってもいるんだ。世の中いろんなサプリメントがあるが、癒しのサプリメントはない。私は癒しの面からもお茶の有用性を感じている。

気がつけば3時間以上話し込んでいた。夜も更け当たりは真っ暗。

お茶の衰退の理由にペットボトルのお茶を上げる人がいる。しかし、お茶を作る最前線の農家の方が必ずしもそう思っているわけではない。もしペットボトルのお茶が原因なら、鹿児島茶も静岡茶と同じように衰退しているはずだからだ。しかし、鹿児島茶は依然としてその存在感を高め続けている。静岡茶がここまで衰退してしまった原因はペットボトルのお茶ではないのだろう。

日本茶カフェ巡りから茶農家巡りに移りつつある癒しを巡る旅。真のお茶の魅力とその衰退の危機に胸を傷ませながらこの旅は続いていく。

窓の風景その45