癒しのコツ~茶と骨~
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その四十五、茶ラゴンクエスト~山香荘茶園~

まだ見ぬ茶を探して川根本町を冒険中、一軒のお茶屋を見つけた。

山香荘茶園 静岡県榛原郡川根本町元藤川17
山香荘茶園

なんと、農家直売の茶葉だけでなく、皇室に納めたという最高品質の茶葉まで売っている。

ようこそ、今お茶を淹れますね。

ありがとうございます。ああ、美味い。
(店内写真撮影OKだというので撮りまくりました)

ここでお茶を売っているのは山香荘茶園という農家のご主人。いろいろお話をさせて頂きました。

どうですか、最近のお茶業界は。

とても厳しいです。今は急須を持っている人自体が少なくなっています。ペットボトルやティーバックなどのお茶しか飲まれません。

はい、良く聞きます。急須を知らない子供たちまで増えてきていると。

聞いた話では、とある大企業が春の新茶から秋の番茶まで全部一律の値段で買ってしまうことまであるそうです。

そうなんですか!?

ええ、今申し上げたのはあくまでも極端な事例ですが、そうなってしまうと我々農家は質よりも量を作ることでしか生きる道は無くなってしまう。本当に茶業界も変わってしまったのだなぁと驚いています。

ホントですね。

江戸時代は米で年貢を納めましたが、ここ川根地方では茶で年貢を納めていたというふうに書いてある文献もあるのです。それくらい川根茶というのは歴史あるものなのです。静岡茶がここまで衰退してしまったのは、我々生産者や販売者からの情報発信が足りないのか、もしくは消費者が望んでいないのかもしれません。とにかく今は茶園の廃業が凄いんです。昔は小さな農家も強い思いでなんとかやっていたけれど、もうそれもいなくなってきました。

ボクは静岡茶は売っているモノは良いと思うのです。問題はPRの方法だと思います。静岡茶に次いでお茶の産地である鹿児島は、お茶の新興地として勢いがあるじゃあないですか。

鹿児島のお茶も、昔、静岡の元副知事だった方が鹿児島に行って、鹿児島にお茶の栽培地としての可能性見出し、盛り立てていき、現在のお茶の新興地になって今があるんですよ。

そうなんですか!?

鹿児島はなだらかな土地を大規模な農業としてお茶を栽培しています。土を入れ替えて、まっ平らな鹿児島の農地を整備して、機械化し近代化を進めているのです。鹿児島の茶栽培は常に茶農業の先を見据えているように思います。

静岡でも牧之原とか平地の茶栽培がありますよね。傾斜の茶畑と平地の茶畑とで分けて盛り立てていけばよいのではないでしょうか?

静岡は平らな土地でも土地所有者に細かい違いがあるんです。だから鹿児島のように統一が出来ずにいいます。川根茶に関しては栽培には傾斜の農地が良いのです。ただ栽培が難しく採れる量も少ないのです。抹茶ブームの今は、てん茶を作る方に多くの農家が流れているのが現状です。抹茶はてん茶を乾燥させて砕いて製造します。煎茶ほどにコストもかかりませんから。。

なるほど、同じ茶でも製造方法にいろんな違いがあるんですね。

よろしければ、製茶工場が店の後ろにありますのでご覧になってみますか?

いいんですか?

どうぞ。

店主は奥に続く扉を開けた。

おお!凄い!

製茶技術がつきものの煎茶は手もみによって全く違う味になります。昔は茶師という職業が成り立つほど手もみの重要性は高かったのです。その手もみの技がこのように機械化されて現在のこういった作業場が出来ております。

凄い、初めて見ました。

こちらはお茶の葉を乾燥させる機械です。基本的に一つの機械が担えるのは一つの手作業のみです。つまり5パターンの手作業があれば5つの機械が必要になります。もともと手作業でやっていたものを機械化したのですが、コレを発明したのは埼玉の医師の方で、これを皮切りに一気に手作業が機械化するようになりました。この医師の方は茶業界の父と言われています。

なるほど。

基本お茶は毎回収穫によって違う一期一会。人生で採れる茶の収穫の回数も限られていますので、あと何回いろんな茶葉に出会えるのだろうか、と毎回が新しい茶葉との出会いになっています。

毎回同じものが出来るわけではないということなのですね。

はい、土によって味が変わるのは、もちろんのこと。茶畑の隅に一本の梅の木があったというだけで、茶の香りや味に変化が加わります。昔は風がひとつ吹くだけで茶の味が変わったと言われています。それほど茶というのは繊細な農作物なのです。

聞いた話なのですが、今は茶商の方々もこのままではいけないと思い茶業低迷の打開策のひとつとしてカフェを経営するようになったという面もあるそうですね。

ええ、確かにそういった面もあると思います。いろんな事に手を伸ばしていかなければ、お茶だけではなかなか商いは成り立たないものなのかもしれません。永谷園なんかも昔はお茶屋だったんですよ。

永谷園ってあのお茶漬けの!?

そうです。お茶をどうにか工夫して売り出そうとして生み出したのがお茶漬けのふりかけです。今や大規模な企業になりました。タミヤ電気も元はお茶屋なんです。タミヤ電気の原点は海外輸出です。それが海外で模型に目を付けて、今や大きな模型の会社になりました。

そうだったんですか!

昔は茶を飲み哲学を語り生き方を語る茶人という古い人種もいたのですよ。

茶人!

ウチも時期によっては喫茶をやることもあります。こちらへどうぞ。

店主は隣接する休憩所に案内してくれた。

おお~。

古い納屋を改装してそのまま茶屋にしたんです。川根は湿度が高いので、この地域の人達は間取りを吹き抜けにして寝てたのです。

歴史を感じます。

よろしければ、茶畑もご覧になりますか?

いいんですか?

店主は茶畑に案内してくれた。

茶栽培には化粧ならしという作業があります。秋に一度そして冬にもう一度これによって茶の性質が変わるのです。もしやらなかったら後の年は大変なことになります。今はその時期になります。

こんなに近くで茶畑をみるのは初めてです。なんか僕らがイメージする茶畑と違う気がします。

ここは自然仕立ての栽培になりますので出来る限り自由に育てています。出てくる茶の芽の数が少く、収穫も手摘みで手間もかかりますが、味が良いのです。皇室に献上するものになります。

機械で上に出る芽を一気に刈り取る機械仕立ての茶畑がこちらです。

そうそう、これです。僕らのイメージする茶畑って一見かまぼこみたいな形もしてますよね。

こちらは自然仕立てとは違い綺麗に刈り揃えられた葉の中から、多くの茶の芽が生え出して来きます。それを一気に機械で刈り取る為に茶畑の形をかまぼこ状にならしているのです。

かまぼこ状切り仕立てられた茶葉の間から茶の芽だけが顔を出して来て、それを一気に機械で刈り取るのですね。一方で最初に見た自然仕立ての方は、茶葉の間に出てきた茶の芽を手を突っ込んで一枚一枚手摘みで取っていくと・・・なるほど。自然仕立ての茶畑の方が、出てくる茶の芽の数が少ないけれど、美味いんですよね。

はい、ちなみに両河内と川根では土も水も違うので味が違うのです。川根温泉の下流あたりから土が違っていると言われていますし水質も違います。本山筋は安倍川流域、川根筋は大井川流域。なので両者は風味からして違うのです。

美味しいモノが作られる自然の成り立ちは面白いです。こんなに美味しい静岡のお茶が衰退し続けているのは辛いです。ボクはお茶は文化だと思っています。なんとかしたいです。

おっしゃるとおりです。リーフの静岡茶業の衰退はもう危機的状況です。よろしければ静岡県茶業会議所というところに行ってみてはいかがでしょう。ここが静岡茶業界のトップです。

静岡茶業界のトップ!?そんな組織があるのですか!

「静岡茶屋」という黒い旗のようなものをみたことはありませんか?あれは静岡の日本茶を普及していこうという静岡県茶業会議所の活動の一環なのです。

静岡茶屋の旗!いろいろな場所で見かけました。

あれは静岡県茶業会議所のプロジェクトだったのですか!

骨雄は静岡茶業界のトップ「静岡県茶業会議所」の情報を手に入れた!

茶業界の為にも頑張ってください。

はい、出来る事をやっていこうと思います。いろいろ詳しいお話をありがとうございました。

川根茶界には、かつて古代人「茶人」が存在したという事実。そしてついに静岡茶業界のトップ「静岡県茶業会議所」の存在を知ることになった骨雄。大きく移り変わる市場や厳しい自然と闘いながらも、ひたむきに美味しいお茶を作り続ける茶農家の姿に胸を打たれながら茶畑を後にする。ますますRPGみたいになってきたこの旅はもう「茶ラゴンクエスト」でいくことにします。行く末はどうなるのだろう。

窓の風景その47