癒しのコツ~茶と骨~
骨 茶道のコツ
骨 続・茶道のコツ
骨 続々・茶道のコツ

その五十六、冒険の旅~「紅葉山庭園」「前田幸太郎商店」~です

静岡市葵区駿府城公園1-1
紅葉山庭園

歴史的背景を活かした紅葉山庭園では、城郭の大名庭園を思わせるような様々な表情を味わうことができます。入園料は150円。

春は桜、夏は紫陽花、秋は紅葉、冬は椿など四季折々の花々を眺めながら立礼席でお茶を楽しむのはいかがでしょうか。また、庭園内の茶室は、本格的な点前をはじめ、生け花や句会など、 多目的にどなたでもご利用が可能です。貸出し用の抹茶用諸道具も備わっており、お気軽にお茶を楽しむことができます。
紅葉山庭園のホームページより

庭園散策の途中で、日本茶を楽しむことが出来る場所です。

喫茶と茶菓子は別途有料。510円で新茶、本山抹茶、朝比奈玉露を茶菓子付きで楽しむことが出来ます。

最後にサービスでほうじ茶が頂けます。さっぱりとする。

観光客も沢山いました。茶葉を買うことも出来ます。

素晴らしい。癒される光景です。庭園の向こうに高層ビルが見えるあたり、面白い不思議な光景だ。

今日はこれからもう一軒。茶問屋に行きます。
茶問屋とは、「複数の産地、異なる品種の茶葉をブレンド合成し、更なる上質な茶へと昇華させる「合組(ごうぐみ)」という技術を持った茶師のいる茶屋」の事です。最近でこそ合組のないシングルオリジンの茶が出てきましたが、本来は茶というのは茶師による合組ありきの商品なのです。

静岡県静岡市葵区北番町15
やまはち(株)前田幸太郎商店

全国茶審査技術大会 史上初の十段取得
当時は、九段までしか設定しておらず、この九段でさえも「取得できるはずない」と各茶師から笑われる程の超難関な技術でしたが、前田 文男が難なく取得し、その後も連勝する結果を踏まえ、全国茶業連合青年団は「全国茶審査技術大会十段」を正式に作りました。茶師十段である、前田文男が中心となり、茶の特性を知り尽くした者たちが吟味厳選し、 三代という長きに渡り引き継がれた当店独自の伝統的技術・製法で、 それぞれの茶葉が持つ長所や個性が引き出されるように丹精込め、自信を持って仕上げております。

お茶は数種類の茶葉を組み合わせることで「香甘苦渋」(香り、甘み、苦味、渋み)の調和のとれた奥深い味わいが生まれます。一種類ですべてを兼ね備えたお茶はありません。知識と経験とイメージを総動員しながら少しずつ茶葉を加えバランスのとれた一つの最高の商品をご提供します。
前田幸太郎商店のホームページより

NHKのプロフェッショナルにも出演した茶師。結構忙しい時期に行ってしまったにもかかわらず、丁寧に応対していただきました。なんとツーショット写真にも快く応じてくださった。

この仕事を30年やっていますが、何年やっても終わりが無いです。一年たつとまたスタートに戻ってしまう。自分の作るお茶が相手に合うかどうかということもあります。終わりが無いという思い、そのぐらいでないとうまくいかないと思います。

前田さんから見てどうですか、リーフのお茶離れというのは感じていますか?

小学校にお茶の事を教えに行くことがあるのですが、子供たちが急須を知らないんです。じゃあどうやってお茶を飲むのか、というと「お~いお茶」を飲むと。冬はどうするのかというと、「お~いお茶」を沸かして飲むのだと。驚きました。

こやぶ園という茶農家の方も言っていました。100組の家庭に急須を持っているかどうかアンケートをとったところ急須を持っている家庭はゼロだったと。

昔は静岡では急須を新婚の家庭にプレゼントしていたものです。国会でもペットボトルのお茶が置かれているのを見ますし、本当に危機感を感じます。

松島園という茶農家の方も言っていました。中国では会議の時に蓋付きの煎茶が出るのに、日本の会議ではペットボトルのお茶が出るのだと。本当に悲しいと。

お茶は嗜好品なんです。喉が渇いた時の水を飲むように飲まれるものでもないです。でも今はペットボトルのドリンク向けに茶を作る茶農家も多くなってきています。硬い茶葉を大量に量産するんです。良いお茶を作る農家がどんどん減っています、本当に少ない。

山香荘茶園つちや農園の茶農家の方と言うことも同じです。そういうことが多くなってしまうといずれ茶農家ももう質より量をとらなければ生活が出来くなる、と。しかし日本茶は輸出が盛んだという話を聞くのですが、そのあたりはどうなんでしょう?

皆が輸出できるわけではありません。輸出できるのは一部の店だけですよ。

豊好園の茶農家の方も言っていました。輸出ができるのは一部だけだ、と。

ボクは今の静岡にはどれだけの茶屋があって、そこはどういう店で、どこにあるのか。それが一目で分かるウェブ等があれば、と思って作っています。そういった本はありますけれど、ネットで見れる仕組みもあった方がもっと広まりやすいのではないかと思います。

今はネットの時代ですから、そういうのもありかもしれません、有難うございます。あなたはそういった仕事をされているんですか?

いえ、まったく違う仕事です。普通の会社員ですよ。ただこういうことをやっているボク自身も救われるんです。お茶に関わっている方々は皆良い方が多いように思います。人間不信になりそうな自分が救われます。

茶師十段の前田文男さん、新茶の忙しい時期に行ったにも関わらず、何者でもない自分に対して腰の低い丁寧な対応で恐縮してしまいました。

静岡茶業界の衰退の面で茶農家と茶師の言う事が重なってしまっている。このままでは本当にヤバイ。これまでにボクは幾つもの茶屋、茶農家を巡ってきましたが、静岡茶業界を衰退の波が覆っていて静岡茶を愛する人々が悲しんでいるのを感じました。

特に印象に残ったのは茶業界に関わる方々のこんな声でした。

「このままでは静岡は鹿児島に茶の名産地としての地位は譲り渡す事になるだろう、それでも静岡のお茶が好きだから静岡でお茶を作りたい」

「このままいけば「お茶」という定義はペットボトルに取って代わられるのかもしれない。私達の言う「お茶」は需要、売上の面でペットボトルに負ける。それでも美味しいと思うお茶づくりをやめることはできない。自分達は急須で淹れたお茶が好きなんだ。この文化を守りたい」

「お茶よりも稼げる仕事は沢山ある、貧しい思いをしてまでも、お茶を仕事にするのは静岡茶が好きだから。でもそれだけでは収入が少あまりにも少ないので他の仕事もせざるを得ない。出来るならお茶を作ることだけに専念したい。」

人手不足の今、儲かる、稼げているという背中を見せなければ若い人達は付いてこないでしょう。若い人たちから見放された産業がどうなるか、結末は見えています。これはなんとかしなければいけない。

そう思いながら店内を見回すと、有名人のサインだらけ、あの中田英寿もいる。山寺宏一、茂木健一郎、とそうそうたる顔ぶれです。前田さんはあらゆるメディアに顔を出して世界中に静岡茶を発信している。

これだけやっても静岡茶業は衰退が止まらないのか。

茶師十段の前田文男さんが作った一品「茶師の極み」を自宅で淹れてみた。

おお、これが合組の力か。味、渋み、香り、旨味、余韻、全てが立体的に組み合わさっているように感じる茶だ。シングルオリジンとは違ってより整えられているように感じる。分厚く力強い一杯だ。

静岡の煎茶が失われ続けている。もしかして自分にも何か出来る事があるのかもしれない、解決策を見出せるのかもしれない、そう思って希望に胸を躍らせながら始めたこの旅。

「自分にできることは何もない、この現状を発信し続けることだけだ」
という現実を突きつけられた骨雄。あまりにも切ない癒しと日本茶を巡るこの旅。いつの日か静岡茶業界の闇が晴れて無くなる日を信じて続いていく。

窓の風景その58